愛してるなんて言えない

「俊哉、これ持って」
「はいはい」

日曜の午後。
俺は幼馴染の美夏に荷物持ちとして連れ回されていた。

「なぁ、もういいだろ? 十分買ったじゃん」
「足りない」
「一体何が?!」

美夏は俺と出かけると、これでもかってくらいに買い物をする。
結果、家に帰る頃には俺の腕は死んでます。

「っつうかそろそろ昼だしさ!! 飯食おーよ!!」

俺がそう言うと、前を歩いていた美夏が振り返る。

「それも、そうだね」

助かった。
やっと休める……。

「俊哉、なんかこの辺で美味しいお店知ってる?」
「この辺だとあの道曲がったとこにピザ屋がある」

俺は顎で前方にある道路を指す。
美夏は一度その道を見てから俺に向き直った。

「じゃあ、そこに行こうか」
「りょーかい」

何でもいいから早く座りたい。
俺の意識はそこに集中してた。




「美味しいね、ここのピザ」
「だろ?」
「俊哉って詳しいよねぇ、こういうお店」

目の前で嬉しそうにピザを食べる美夏。
その笑顔に、思わず見とれてしまう。

「何?」

ピザから顔を上げた美夏と目が合うと、俺は必死になんでもないと首を振る。
この俺の態度でわかると思うけど……。

俺は美夏が好きです。

でもダメだな。
全然伝わらないし。
美夏にとったら俺はいつまでも幼馴染。
まぁ、この関係は好きだからいいんだけどさ。

「俊哉のそのピザ一枚ちょーだい」
「いいよ。その代わりお前のと交換な」
「仕方ないなー」

傍から見たら、俺達って恋人同士に見えたりすんのかな。
そんなことを考えること自体が寂しい。
でもやっぱり、そろそろこの関係を崩したい自分がいた。

「で? 昼からはどこ行くんだよ」
「ん〜……なんかちょっと……疲れた……」

珍しい。
いつもなら一日中歩き回るくせに。

「どした? 体調悪いの?」

俺がそう尋ねても美夏は首を横に振る。
なんかいつもと違うのは気のせい、か?

「じゃあもう帰る?」
「ヤダ」

なんなんだぁ? 一体。
何年一緒にいても、美夏の気持ちはさっぱり読めない。
俺はどうしたらいいんでしょうか。

「久しぶりに……俊哉の部屋に行きたい」
「俺の、部屋?」

それって結局帰るのと変わらないんじゃないの?
まぁ、別にいいけど……。

「中学のときまではよく行き来してたけど、最近行ってないもん」
「そりゃそうだけど……」
「やらしー本とか全部捨ててあげるから」
「おい」

でもまぁ、なんとなく元気のない美夏をこれ以上外にいさせるのも心配だし、俺は美夏の提案を受け入れた。




「へー。相変わらず綺麗にしてるね」
「当たり前です」

俺の部屋に入ると、美夏はベッドに直行。
そのままベッドの真ん中に身を沈める。

「んー、寝そう」
「寝てもいいけど落ちるなよ。お前寝相悪いんだから」
「いつの話よ!!」

そう言いながら美夏はベッドの上でゴロゴロしている。
暇になった俺はとりあえずその辺にあった雑誌を読み始める。

「ねぇ、萱谷俊哉」
「なんでフルネームなんだよ」
「私達って、何?」
「は?」

突然わけのわからないことを言い出す美夏。
やっぱり今日……おかしくないか??

「ただの、幼馴染?」

え、いや、そりゃ幼馴染だろ?
小さい頃からずっと一緒にいた。
それって幼馴染って言うんじゃないの?

「私……日比君に告白されたよ」
「えっ?!」

それもまた突然だった。
っていうか、えっ、日比?!

「そっ、それでお前なんて?!」
「何にも言えなかった……。
まさか日比君が私のことそんなふうに見てるなんて思ってなかったし」

俺は、知ってた。
日比が美夏のことが好きだって。
協力しろって言われてたし……。
でもなんだよ。
俺の協力なんかまるで必要なかったんじゃん。

「キス、されたよ」
「は?!」

おいおいおい。
どういうことだよ、それ。
確かに日比ならやりそうだけど!!!

「俊哉……私どうしたらいい……?」

それを、俺に聞くの?
お前のことが好きな俺に、聞くんだ?

「日比は……強引なとこもあるけどいい奴だよ」
「それはどういう意味?!」

叫びながら、美夏は勢いよく起き上がる。

「私が、日比君と付き合ってもいいの?
俊哉は……それでもいいの……?!」

そんなん、嫌に決まってんじゃん。
でも……。

「わかった。もういーよ……」

ベッドから降りた美夏は、そのままドアに向かって歩き出す。

「おい、美夏!!」

呼び止めると、美夏はドアの前で立ち止まる。
だけど、振り向こうとはしなかった。

「俊哉は、私の気持ちわかってくれてると思ってた……」

そう言い残し、美夏は部屋を出て行った。
残された俺は頭を抱える。

「どういう意味だよ……。
お前の気持ちなんて、わかんねぇよ……!!」

わかってるのは俺の気持ちだけ。
美夏好きだっていう、自分の気持ちだけ。

俺は、美夏が、好き……?

「ま、さか……」

俺はすぐに立ち上がって部屋を出た。
ちょうど、美夏が玄関を出ようとしていたとき。

「美夏!!」

大声で名前を呼んで。
全速力で走って、足を止めた美夏を抱きしめた。

「とし、や……?」
「俺、美夏が好きだよ」

最初から、言えばよかったんだ。
美夏の気持ちがどうとかじゃなくて、俺自身の気持ちを言えばよかった。

「バ、カ……。言うの、遅いよぉ……」

泣きながら、美夏は俺の背中に腕を回す。

「私、ずっと待ってたんだから。
俊哉がそう言ってくれるの、ずっと待ってたんだからぁ……!!」

ごめん。
ごめんな。
今までずっと、言えなくてごめん。

気づいてたんだよな?ずっと。
俺の気持ち、ずっと気づいてて……。

「俺は美夏が好きです。ずっと、好きでした」

小さな頃から、俺の中の女の子は美夏だった。
今もそれは、変わらない。

「私、も。私も俊哉が好き……。
ずっと好きだったよ……!!」

そう言ってくれた美夏を強く抱きしめた。
離したくない。
日比なんかに渡したくない。

「日比にキスされたのって、マジ?」
「え?」

体を離して、右手で美夏の頬に触れる。
このままの流れでいったらキス……だと思ったんだけど。

「マジでキスされたの?」

なんか、気になって仕方なかった。
美夏は気まずそうに俯く。

「マジなんだ」
「やっ、でも、ホントにいきなりで!!」
「ふぅ〜ん」
「俊哉〜〜」

なんかむかつく。
すっげぇむかつく。
はっきりしなかった俺が悪いんだとしても、なんかむかつく。

だから。

「んっ?!」

おろおろしてる美夏に突然のキス。
美夏が俺の胸を押して体を離そうとしても、美夏の頭を掴んで離さなかった。

「んっ……んん…………」

最初は抵抗していた美夏だったけど、俺がキスを深めるうちにそれもなくなる。





俺、基本的に照れ屋だし。
きっと「好きって言って」って言われて言えるタイプじゃないし。
「愛してる」なんて……きっと口に出しては言えないけど……。



俺は、美夏を愛してるよ。





【あとがき】
すいません。5万Hit御礼小説、またしても手抜きしました。爆
これたぶん2006年辺りに書いたやつかと・・・。
本当にすみません。
でも、これ割と好きだったんですよね。
いつか書き直してUPしようと思ってたので・・・今UPしてみました。笑

5万Hit、本当にありがとうございます。
細々とやっていたサイトがこんなにもたくさんの方に目に触れ、今とても幸せです。
これからも頑張って続けていけるように頑張ります。

未希






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