恋の痛み

気がついたときにはもう、すべてを持ってかれていた。

恋に、落ちていた。





「早紀ちゃん」

私を呼ぶ声。
優しい笑顔。
憧れだと思っていたそれはいつしか違うものに変わっていた。

「早紀ちゃん、俺、結婚するんだ」

その言葉がきっかけだった。
私が自分の想いに気付いたのは。
そう、すべては遅すぎた。

「もう、なかなか会えなくなるね」

彼は、私ではない、他の誰かのために生きることを誓った。
私ではない他の誰かを守るために、生きていくことを。

「早紀ちゃん、泣かないで」

私の頬にそっと触れる彼の手。
その温かさにますますが涙が止まらない。
ポロポロと零れ落ちる涙の中に、今までの彼との思い出が光る。

「俺にとって早紀ちゃんは、とても大事な存在だったよ」

彼の中の私は、どんなふうに見えていただろうか。
何度も「早紀ちゃんみたいな妹がほしい」と言われた。
私も、彼のようなお兄ちゃんがほしかった。
その気持ちがまさか恋だなんて、幼い私は気付かなかったんだ。

「早紀ちゃん。俺は君が幸せになってくれることを祈ってる」

私の幸せは今、大好きな貴方の手で壊れたわ。
そんなこと言えるはずもなくて、私はただ泣き続けた。





「啓一さん」
「早紀ちゃん……」

招待状を手に、私は彼の前に立っていた。
ここに来るのにはとても勇気が必要だったけれど、けじめをつけなければ前に進めない。

「啓一さん、私ね」

まっすぐに彼を見つめる。
いつもとは違う彼。
整えられた髪型に、真っ白なタキシード。

「啓一さんのことが好き。ずっと気がつかなかったけれど、啓一さんが好きだった」

その想いを伝えなければ。
私はきっとどこにも行けない。

「早紀ちゃん、俺っ」
「幸せになってね」

啓一さんの隣に立つ人を見る。
とっても、綺麗な人。

「元気な赤ちゃん、産んでくださいね」
「ありがとう」

彼女は微笑んだ。
微笑んで、自分のおなかに手をあてた。

「貴方のことは、啓一からずっと聞いてたの」
「え……」
「正直、嫉妬してたわ」

彼は、私のことを彼女にどんなふうに話したのだろう。
気になったけれど、聞かない。

「啓一さんは、私のことはなんとも思ってません。
貴方のことが世界で一番好きなんだって、この間言ってましたから」

私が言うと、彼女は彼を見上げる。
彼は照れたように笑った。

「啓一さんは私にとって優しいお兄ちゃんです。それ以上でもそれ以下でもありません」
「早紀ちゃん……」

この胸の痛みは、その言葉を否定しているけれど。
さっきの告白が、私の本当の気持ちだけれど。
もう、言えない。

「今度、家に遊びに来て」
「はい。いつかきっと」

そのときはきっと、デッレデレの彼を見ることになるんだろう。
愛しの奥さんと赤ちゃんに囲まれて、幸せ目一杯の彼に。
そのとき私は、笑顔で彼に会えるだろうか。

「それじゃあ啓一さん、また」
「ありがとう、早紀ちゃん」

ゆっくりと二人に背を向けて、歩き出した。
門をくぐった瞬間、走った。
もう、明日は立てないんじゃないかって思うくらい、全力で走った。





「好きだったの。本当に、好きだったの。
これからも、一緒に、いたかったのよ……!!!」


そして私は、恋の痛みを知った。





【あとがき】
今回は1万Hitの時と違って書き下ろしです。笑
こんなもので申し訳ないですが、2万Hitのお礼とさせていただきます。
・・・何故か最近小説書こうとすると失恋ものばっかりなんですが、これなんででしょう?笑
今軽く短編と中編の間くらいの長さになるであろう作品をひとつ書いてるんですが、それも微妙に失恋チックな・・・。
いや、どうなるかはまだわからないですけど。
なんでなんでしょうね??苦笑
2万Hitの御礼小説ですから、幸せいっぱいのものを書こうとしたんですがあえなく失敗しました。
お気に召さなかったかもしれませんね><
申し訳ないですが・・・連載の方で挽回させてください!!!
では、次は3万Hitに向けて更に精進します!!!

未希






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