触れて、揺れて

「1……2……3……4……」

指折り数える。
あの人と会ってない時間。

「もう、4ヶ月も会ってない」

4ヶ月。
これまでの最長記録だ。
最近のあの人は、とにかく仕事が忙しいらしい。
一応連絡は取れる。
でもそれも1週間に1回程度。
なんて言うか……うん。干からびそう。

「今日も連絡ないし」

誰もいない部屋で、一人呟く。
あの人とこの部屋で過ごしたのも、もう4ヶ月前のことだ。
他愛のない話をして、ふと沈黙が訪れた瞬間にキスをした。
そんななんでもないことが、どれほど愛しい時間か。
離れていると痛いほど感じるんだ。

「こんな気持ち、知りたくなかったな……」

恋愛なんて、楽しければいいと、そう思ってた。
でも、今のこの恋は、楽しさなんてない。
あるのは“苦しい”だったり“切ない”だったり、そんな感情ばかり。

「会えれば、幸せになれるのに」

あの人が目の前にいれば、あの人に触れられれば。
それだけで幸せになれるのに。
それだけが私の絶対の幸せなのに。

「ホンット子供だ、私・・・…」

昨日掃除をしたばかりの部屋。
ちょっと模様替えをしてみた。
あの人が見たらなんて言ってくれるだろう。
いつもの笑顔で、「雰囲気変わったね」なんて言ってくれるだろうか。

「会いたい……」

会いたいと、そう思っているのは、もしかして私だけなんだろうか?
あの人は、会わなくても、連絡しなくても、全然平気で、なんとも思わないんだろうか?
そんな嫌な考えばかりがよぎる。
必死に頭を振って、そんな考え打ち消して。
だけどまた考えて、ってその繰り返し。

「本気で干からびる……」

携帯を手にとって、メールの問い合わせをしてみる。
でもやっぱり、“新着メールはありません”の表示。
もう溜息をつく元気すらない。
パチンと音を立てて携帯を折りたたみ、テーブルの上に置く。

「仕事が大事なのは、わかるけどぉ」

私の独り言は続く。
寂しい女だな、と心の中で呟きながら。

「連絡くらい、くれたっていいじゃん」

1通のメールがどれほど嬉しいか、あの人はわかってるのかな。
たまに電話で声が聞けた時、思わず泣いてしまっていることをあの人は知ってるのかな。
4ヶ月という月日が、どんどん私を弱くする。

「もう少し近くに住んでたらなぁ」

思わずそんなどうしようもないことも言ってしまう。
私とあの人は、遠距離という程ではないがそんなにすぐに行き来が出来る程近くに住んでいるわけでもない。
電車で1時間弱かかる。
もっと近場に住んでいたならほんの5分でも会えたのだろうけど、そういうことも叶わない。

「会いたいぃー」

テーブルに突っ伏して、くぐもった声を部屋に響かせる。
壁の薄いアパート。
隣の住人に聴こえているだろうか。
でももう、そんなこともどうでもいい。

「会いたいんだよ、バカ!!」

さっきそこに置いた携帯を掴んで、投げる。
もちろん壊れられちゃ困るから、クッションに向かって。
本当は思いっきり壁にぶつけてやりたいのに、変なところで冷静な考えがよぎってしまって、そこにまたイライラする。
何もかも壊してしまいたい。
そんな衝動に駆られるのに、そんなこと出来やしないってわかってる。

そのときだった。

さっき投げつけた携帯が、けたたましく鳴った。
当然あの人からの着信音は他の人とは別のものに設定してあって。
今鳴っているのは、間違いなく、それ。

「きたっ!!」

慌てて携帯を拾い上げ、電話に出る。
心臓が、バクバクいってる。

「もしもしっ?!」
『ははっ。思ったより元気そう』

久しぶりに聞く声。
疲れていると感じるのは気のせいじゃない。
やっぱり仕事、忙しいんだ。

「元気じゃ、ないよ……」

労わりの言葉でもかけてあげたい。
だけど、口から出てくるのは我儘な感情ばかり。

「寂しかった……」
『うん。ごめん。今日は割と早く帰れたから、電話したんだ』

割と早く帰れたって……今はもう21時半を過ぎている。
いつもはもっと遅いんだろう。
連絡がこないことにイライラしていた自分が恥ずかしくなってくる。

『全然連絡出来なくて、ごめん』

謝らせたいわけじゃない。
そんな言葉が、ほしいわけじゃない。

「いいの。電話くれて……ありがとう」

素直に伝えなきゃいけないことはたくさんある。
確かに、「寂しかった」も本当の気持ち。
でも、「ありがとう」だって、心の底から思ってる気持ち。

「仕事、大変だと思うけど、無理しないでね」
『ありがとう。頑張るよ』
「ねぇ?」
『ん?』

そしてこれも、伝えたい気持ち。
我儘になってしまうのかもしれないけど。

「今度会ったら、目一杯抱き締めてね」
『……うん。わかった』





日曜日。
なんの用事もなく、ただボーっと部屋でテレビを見ていた。
そのときにふと、インターホンの音が聞こえてくる。
モニターに映し出されているのは、紛れもなくあの人の姿。

「嘘っ、なんで?!」

慌てて玄関へ向かう。
急いでいるから鍵が上手く外せない。
ガチャガチャっと音を立てて鍵を外し、ドアを開ける。

「おはよ」

笑顔のあの人が、そこにいた。
私は茫然と彼を見上げる。

「どう、して……?」
「抱き締めに、来たよ」

そう言って、彼は私を力一杯抱き締めた。






【あとがき】
20万Hit御礼小説は、小説というより独白に近いものかと思います。笑
会えない寂しさ、苦しさ。
その分会えたときの嬉しさ。
なんとなくそんなものが書きたいな〜と思って、書いてみました。

20万Hitなんて以前では考えられなかった数字です。
いつも来てくださっている皆様には、本当に感謝してもしきれません。
いつもいつも、本当にありがとうございます!!!
また30万Hitまでいけるよう、頑張りたいと思います!!!!!

未希






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