キスを止めないで

「んっ……んん……」

深くなっていくキス。
苦しくなって声を上げると、琢磨は私から唇を離す。
瞬間襲う、激しい孤独。

「お願い、琢磨……やめないで……」
「え?」
「もっと……キスして……」

琢磨の腕をぐっと引いて、唇を近づける。
かかる吐息に、眩暈がしそう。

「どうかしたの?」

琢磨が喋ると、唇が微かに触れる。
イヤ。
そんなんじゃイヤ。
ちゃんと触れて……。

「お願い、キスして……」

ただそれだけを求めた。
今ほしいのは、琢磨のキスだけ。

「なんかよくわかんないけど……」

そう言いながら琢磨は唇を重ねてくる。
あぁ、これなの。
私がほしかったのはこれ。
この甘い痺れ。

「んっ……」

琢磨に触れていたいの。
琢磨と繋がっていたいの。
1ミリだって……離れていたくないの。

だからキスして。




「で? どうかしたの?」
「別に何も」

長い長いキスの後。
ようやく落ち着いた私を抱きしめながら、琢磨が言う。

「何もって何? 何もなかったら普通あんなこと言わないじゃん」
「ホントに何もないもん」

別に、何かがあったわけじゃない。
ただ、本当にただ……キスがしたかっただけ。
琢磨を感じたかっただけ。

「あんなに俺を求める紀香、初めて見たけど」
「そう?」

いつも、求めてるよ?
私はいつだって琢磨だけを求めてる。

「まぁ、たまにはこういうのもいいかな」

そう言って笑った琢磨。
あぁ、やっぱり琢磨が好き。
こうして手の届く位置に琢磨がいる。
そのことが、何より幸せ。
でもね……。

「足りない、の」
「え?」

ぎゅっと握った手。
離れないように、力いっぱい握る。

「琢磨が近くにいればいるほど感じる。
琢磨が足りないって。もっとほしいって」

どんどん、欲深くなっていく自分。
琢磨がほしい。
もっともっと、琢磨の愛がほしい。

「紀香、その台詞……嬉しいけどエロい」

そう言って琢磨は私にキスをした。
触れるだけの、軽いキス。

「イヤ」
「え?」
「そんなキスじゃイヤ」

どうせするなら、深いキスをして。
頭のてっぺんまで痺れちゃうような、そんなキスをして。

「まだ足りないの?」
「全然足りない」

どれだけ補給しても足りない。
底なんかないの。
琢磨をほしいと思う気持ちに限界なんてない。

「じゃあキスよりもっと先をしませんか?」
「それはイヤ」
「なんでだよ」

明らかにむっとした表情の琢磨。
だって……キスより先をしたら……。

「琢磨、全然キスしてくれないもん」
「してるじゃん」
「してくれない」

私がほしいのはキス。
体を重ねたいわけじゃないの。
ただ、唇を重ねられたらそれでいい。

「じゃあちゃんといっぱいキスしてあげるから」
「絶対してくれないからヤダ」

断固拒否。の私に琢磨は段々とムキになってくる。
かくなる上は……強行手段。

「わっ!!」

肩を掴まれて押し倒される。
床に頭をぶつけそうになったけど寸でのところで琢磨が受け止めてくれた。
ぎゅっと閉じた目を開けると、そこには琢磨の顔。

「ちゃんとキス、してくれる?」
「するよ」
「絶対ね?」
「絶対」
「じゃあ仕方ないか……」

そうして私は目を閉じた。
もちろん、キスしてもらうために。




もっとキスして。
深く、深く、キスをして。
貴方の唇で……私を満たして。






キスを止めないで。  





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