奪い去る、そのすべて

「あ、あの、根津さん、俺と付き合ってくんないかな?」

あぁ?
おい、今なんつった?
付き合う?
誰と?
根津?
根津って……美優のことかよ。

「え、私……?」

あぁ、この声は美優だ。
ってことはなんだ?
今美優は告白されてるってことか?
誰にだよ。

「去年からずっと好きだったんだ」

部活サボって体育館裏の茂みで寝てた俺に聞こえてきたそんな声。
出てきた名前、聞こえてきた声は俺の幼馴染のもの。

「えっと、あの……」

はっきりしない美優。
なんだよ、さっさと断れよ!!!

「私……好きな人いるから……」

美優のその言葉に、俺は固まった。
美優に、好きな奴?
そんなん聞いたことがなかった。
っつうかあいつ俺が何度聞いても「いない」って言ってたし!!

「山口、彰浩?」
「えっ」

男が口にしたのは俺の名前。
そしてそれに驚く美優の声。
俺は体を起こして二人の様子を覗いた。

「根津さん確か山口と仲良かったでしょ?
二人は付き合ってるのかって、皆が言ってる」

え、何?
俺らってそういうふうに見られてたわけ?
なんだよ。
ならもっと堂々と好きオーラ出してもいいんじゃん。
まぁ、美優本人は気付いてないだろうけど……。

「付き合ってるはずないよ!!!」

ほら、完全否定。
美優にとって俺ってただの“幼馴染”なんだよな。

「まぁ、山口が相手なら仕方ないかぁ」
「だ、誰も彰浩だなんて言ってないでしょ!!」

う〜わ〜、凹むんですけど。
俺の恋は玉砕ですか?

「まぁ、そういうことにしとくよ」

美優に告白したそいつはそう言ってその場から去っていた。
残された美優はそのままそこに立ち尽くしている。

「彰浩なんか……好きじゃないもん……」

呟いたその言葉。
風に乗って俺の耳に届く。
それがなんかむかついて、飛び出した。

「美優!!」
「えっ、彰浩?!」

突然俺が出てきたことに驚いた美優は目を見開いて後ずさる。
俺はそんな美優の手を取った。

「誰だよ、お前の好きな奴って!!」
「今の聞いてたのっ?!」

俺に腕を掴まれた美優は必死に俺から逃げようとする。
誰が逃がすか。

「お前俺には好きな奴なんていないって言ってたくせに!!」
「あ、あれは断るために……」
「嘘つけ!! いるんだろ?!」

あの言い方は本気だった。
絶対、美優に好きな奴はいる。

「俺の知ってる奴か?!」
「彰浩に関係ないじゃん!!」

叫ぶようにそう言った美優。
なんかすっげぇ……むかつくんですけど。

「ある!! 大アリだよ!!」
「なんで?!」
「お前が好きだからだろ?!」
「え……」

ったく。
なんでこんなかっこ悪い告白しなきゃいけないんだ。
もっとちゃんとしたシチュエーションで言いたかったのに。
小学生みたいじゃん。

「……言っとくけど」

言ってしまったものは仕方ない。
この際全部言ってしまおう。

「俺はお前が誰かと付き合うなんて許さないから。
お前はずっと俺と一緒にいればいーの!!」

自分勝手だとか、傲慢だとか、そんなのどうでもいい。
耐えられないんだ。
美優が誰かのものになるなんて……。

「たとえお前が俺以外の奴と付き合っても、絶対に奪ってみせる」

誰が相手でも関係ない。
美優は渡さない。

「彰浩……」
「10秒あげます。俺が好きって言いなさい」
「ちょっ、何それ!!」

強引?
知るかよ。

「10」
「ちょっと彰浩!!」
「9……8……」

これは俺の、賭けだった。
これで美優が俺のことが好きだって言えば……。
俺はもう絶対に美優を離さない。

「7……6……」

カウントが続く。
目の前の美優は顔を赤くして俯いていた。

「5……4……3……」

あと、2秒。
なぁ美優。
言ってくれねぇの?
本気で俺のこと、好きじゃねぇの?

「2……1……」
「好きっ!!!」

“0”をカウントしようとしたとき。
美優が叫んだ。

「美優……」
「彰浩のバカ……。卑怯だよ……」

目には、微かに涙。
そんな美優が愛しくて、抱きしめた。

「卑怯でもなんでもいーの。俺はお前が好きなんだから」

「やっぱりバカ……。でも……好き」

たとえ誰が相手でも関係ない。
美優は絶対に渡さない。





Copyright (C) 2008-2011 miki All Rights Reserved.