甘い甘いミルクティー。
だけど一番最後に……少し苦味を感じる。
なんか、君に似てる。

MILK TEA

「芽衣、どっちー?」

差し出されたふたつの缶。
ひとつはコーヒー。もうひとつはミルクティー。

「どっちー? って私ミルクティーって言ったじゃん」

そう言って、私はミルクティーを受け取った。
久住は私の隣に座ってコーヒーの缶を開ける。

「コーヒー飲めないなんて、お子ちゃまだよなぁ、芽衣は」
「うっさいなぁ!!」

言いながら、久住の背中を叩く。
そりゃあもう思いっきり。
気持ちいいくらいの音がする。

「いってぇ!!!」
「叩いたんだから痛いのは当たり前」
「お前はなぁ、そんなんだから彼氏も出来ねぇんだよ」

ズキッて音が聞こえてきそうなくらい、胸が痛む。
そんなこと、久住に言われたくない。
なんで、久住がそんなこと言うの?

「余計なお世話!! 久住だって彼女いないくせに」

強がって、いつもの自分を演じる。
そうじゃなきゃ、私はこの権利を失うから。
久住の隣にいる権利。
友達としてなら、いくらでも許されるその権利。
久住が私を女として見てないから許されるその権利。

「俺はいーの」
「なんで?」
「好きな子いるもん」
「え……?」

思わず固まってしまった。
そんなの、初めて聞いた。
初耳ってやつですよ?

「どんな、子?」
「可愛い子」
「ふぅ〜ん」

そりゃ、久住が好きになる子だもんね。
可愛いでしょうよ。
私とはきっと全然違うタイプの女の子なんだろうな。

「あ、顔がって意味じゃないからな? 性格が」
「そうなの?」

意外。
久住ってちゃんと性格とか見るんだ。
失礼な話だけど。

「そう。可愛くて可愛くて……抱きしめたくなる」
「変態」
「おい」

平静を装って、久住の話を聞く。
本当はもうこれ以上聞きたくない。
でも……知りたい。

「不思議だよなぁ。
めちゃくちゃ触れたい!! って思うのに……いざその子目の前にすると触れられないんだからさ」

あ、それわかる。
私も……そうだから。
久住に触れたい。
だけど触れられない。
触れたら何かが壊れそうで、怖いの。

「思いっきり抱きしめられたら……幸せなのにな……」
「告白すればいいじゃない」

本当は嫌だよ。
告白なんかしないで。
私まだ、久住の隣にいたいよ。
友達でいいから。
触れられないままで、いいから……。

「無理だよ。その子俺のこと全然そういうふうに見てないもん」
「わかんないじゃん」
「わかるの」

そうしてコーヒーを一口飲む久住。
久住に告白されて嬉しくない子なんかいないよ……?
久住の好きな子、私ならいいのに。
そしたら私、すごく、幸せなのに、なぁ……。

「芽衣は? 好きな奴とかいないの?」
「いるよ」

即答してやった。
もうこれでバレても構わないとさえ思った。

「いるんだ?!」
「何よ」
「いや、何も?」

悪かったわね。
どうせ二年越しの片想いよ。

「芽衣に彼氏が出来たら……こういうふうに二人で会うこともなくなるのかな」
「久住に彼女が出来たら、でしょ」

私に彼氏が出来ることはないよ。
たぶん、ずっと久住のことが好きだから。
たとえ久住に彼女が出来ても。

「っつうかさ、こうやって会うの、これで最後にしねぇ?」
「え……?」

何、突然。
なんでいきなりそんな話になるの?!
展開の早さについていけない。

「早く気付こうよ」
「何、が……?」

呆れた顔で言う久住。
意味わかんない。
え、何、もしかして……。

「私のこと、嫌いになった?」

もう会いたくないってこと?
だから、好きな子がいるとか言って私を遠ざけようとしたの?
本当は今日それを言いに来たの?

「ぶはっ、なんだそれ!!」

コーヒーを飲んでいた久住は軽くそれを吹き出しながら叫ぶ。
ち、違うの……?

「逆だっつうの!!」

逆……?
嫌いの、逆?

「え……?」

思考回路、停止。
わけがわかんない。

「だ〜か〜ら〜!!
もうこうやって“友達”として会うのは嫌なんだって、俺は!!」

わかんないよ。
はっきり、言ってよ。

「俺は芽衣が好きなの!!!」

え、今、なんて言った?
ちょっと待ってよ。
は……?

「え、え?何……?」
「ほら、やっぱりお前俺のことそういうふうに見てなかっただろ?」

ちょっと待ってよ。
話が見えないんだってば!!
でも、でも……!!

「私は久住が好きだよ?!」

これだけは、伝えておかなきゃ。
今、伝えるべき言葉だよね?
私間違ってない、よね?

「へ……?」

間抜けな顔した久住がこっちを見てる。
何その顔。
ぽかんと口開けて。固まって。

「お前……マジでぇ?!」

がしっと肩を掴まれる。
うわっ、顔近い近い!!

「ホントに? 本気で俺のこと好き?!」

あまりの久住の勢いに、私はただ頷くことしか出来なかった。
こんな久住初めて見たかも。

「超嬉しいんだけど!!」
「え、ホントに久住は私が好きなわけ?」
「だからそうだって言ってんじゃん」
「信じられないんだけど」

信じられるはずがない。
だって、なんでこんなことになってるのかさっぱりわからないし。

「信じろよ」
「無理」
「じゃあ証明してやる」
「証明?」

私が久住を見上げたその瞬間。
唇に、何かが触れる。

「んん?!」

待って待って待って!!!
なんで私、久住とキスしてんの?!

「うわっ、ミルクティーの味がする」

唇が離れると、久住はそう呟いて自分の唇を舐めた。
私の口の中には、ほんのりとコーヒーの味。

「たまにはミルクティーもいいかもな」

そう言って笑った久住に、しばらく見惚れてしまったなんて言いたくはない。





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