番外編:いつかそのときは

「なぁ、ゆう。お前……どうしてもお父さんのこと、受け入れられないか?」
「は? 何突然」

棚橋の言葉に、雨宮は露骨に顔をしかめた。
その様子に棚橋は苦笑。

「余計なお世話だとは、思うけどな」
「まさしく余計なお世話」

間髪入れずに雨宮は言う。
先日雨宮の母親の店で柊と初めて会った棚橋だが、その印象は思ったより悪くなかった。
雨宮にしても、確かに父親を嫌っている感じではあったが、そこまで険悪なものは感じなかったのだ。

「なんでそこまで、嫌うんだよ」
「余計なお世話だって言ってんじゃん」
「ゆう」

強めに名前を呼べば、雨宮は泣きそうな顔を棚橋に向ける。
そんな雨宮を棚橋は思わず抱きしめた。

「何がそんなに、お前の中で引っ掛かってんだよ」
「うるさい。あんたに関係ない」

棚橋の腕の中で、雨宮はまだ素直にはならない。
ゆっくりと髪を撫でてやると、棚橋の背中に雨宮の腕が回る。

「関係ないとか、言うなよ」

その言葉に、雨宮は棚橋を見上げた。
棚橋は困ったように笑う。

「俺、お前と結婚するって宣言したはずだけど?」
「そ、れは……」
「お前もそれはOKしてるよな?」
「して、る」
「それでも俺は関係ないとか言うのはこの口か」

そう言って棚橋は雨宮の頬をつねる。
突然のことに雨宮は目を見開いた。

「何すんの!!」
「お前が聞きわけないからだ」

頬をさすっていた雨宮は、もう一度棚橋に抱きつく。
棚橋もそれを受け止めて雨宮を抱きしめた。

「あいつのことは……自分でもよく、わからなくて」
「わからない?」
「好きとか嫌いとかじゃないんだよ。そんな、簡単なもんじゃない」

雨宮の中に渦巻くものはとても複雑で。
簡単に解けるものではない。
棚橋もそれはわかっていた。
だから、それ以上深くは突っ込めない。

「この間は……」
「ん?」
「この間あいつがお店に来た時は、あんたがいたから普通に出来た」

ぽつりと雨宮が呟く。
棚橋が下を向くと、雨宮は棚橋の胸に顔をうずめていた。

「あんたがいなかったら、たぶん一言も喋らなかった」
「ゆう……」
「あいつとまともに喋ったの、いつ以来かわかんないくらい久しぶりだった」

くぐもった声。
泣いているのかと思ったら、顔を上げた雨宮は苦笑する。

「ありがと、棚橋。感謝してる」

それは、普段とは違う素直な雨宮の言葉。
つい棚橋は固まってしまう。

「お前、不意打ちやめろよ」
「なんだよ。じゃあもう言わないからな」
「いや、もう一回言え」
「命令系かよ」

抱きあいながら、二人で笑い合う。
これが、二人の日常。

「いつか、自分の中で整理がついたら、あいつともちゃんと話すから。
だからさ、そのときは……あんた一緒にいてくれる?」

本当にこいつは、と棚橋は心の中で思う。
普段は可愛くない口ばかりきくくせに、時々こうして甘えてくるのだ。
別に狙ってるわけではないのだろうが、こういう雨宮にしっかりやられている自分に、棚橋は溜息をつきたくなる。

「棚橋?」

何も答えない棚橋に不安を覚え、雨宮が棚橋を見上げる。
その上目遣いもやめろと、棚橋は今度は盛大に溜息をついた。

「俺がいないで、誰が一緒にいるんだよ」

ぽんぽんと雨宮の頭を叩く。
そうすると雨宮は嬉しそうに目を細めた。

「ゆう」

呼べば雨宮はまた顔を上げる。
そのとき、棚橋は雨宮の唇を奪った。

「ちょっ」
「何?」
「何じゃない」
「嫌だったのかよ」
「嫌じゃないけどさぁ!!」
「じゃあいいだろ」

結局、イチャつく二人。
それが、二人の日常。




【あとがき】
番外編「対面」の続きみたいなものですね。
嫌愛書くの久しぶりだから二人のキャラ忘れてましたwwww
久々に書けて楽しかったです。
なんだかんだでこの二人も結構ばかっぷるですよね〜。
すっかり雨宮に溺れてる棚橋万歳。笑






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