番外編:ヤキモチ

「ゆう、明日、久々にどっか行くか?」
「え、マジで?」

ソファーに横になって雑誌を読んでいた雨宮は、ガバッと起き上がる。
向かい側で棚橋がくすくすと笑っていた。

「いつもいつもここじゃあ新鮮味もないからな」
「え、じゃあ映画見に行こうよ。棚橋が見たがってたやつ」
「あぁ、あれか」

頷いて棚橋は近くにあった新聞を手に取った。
映画の上映状況の欄を探す。
目的の映画の上映時間を調べた。

「12時ちょうどのやつにするか」
「えー、朝一のにしようよ。見終わったらちょうどお昼でしょ」

いつの間にか棚橋の隣に座って新聞を覗き込む雨宮が言う。
棚橋は一瞬にして嫌そうな顔をした。

「日曜日にそんな早く起きるのかよ……」
「あんたはいつも寝過ぎなの」

それからいつもの言い合いが続き、結局朝一で見に行くことが決まった。






「棚橋、もっとちゃんと歩けないの?」
「ねっみぃー」

普段通りさっさと歩く雨宮。
その横をのそのそと歩く棚橋。

「映画見ながら寝るなよ」
「んなことしたら金がもったいない」

そう言いながらも棚橋の目は半分以上開いていない。
雨宮は溜息をついてチケット売り場の列に並んだ。
そのとき、ふと見知った顔を見つける。

「あれ? 藤田?」

名前を呼ばれた男は振り返り、雨宮の顔を見て驚いた表情になる。
だがそれはすぐに笑顔に変わった。

「優希!! 久し振りだな!!」

ピクッと、棚橋の眉が動く。
雨宮はそれに気付かない。

「元気そうだね、藤田」
「おぉ、元気元気。優希も元気かよ」
「一応ねー。そっちの子、彼女?」

雨宮は藤田の隣にいる女に目を向ける。
身長が低く、ふわっとしたスカートがよく似合う、可愛らしい子だった。
雨宮と目が合うとにこりと笑う。

「あぁ、そうだよ。高校んときから付き合ってんだ」
「へぇ。あんたにはもったいないくらい可愛い」
「うるせ。お前こそ彼氏と一緒かよ」

藤田の目が棚橋に。
棚橋はすっと視線を逸らした。

「彼氏……なの?」
「なんだそれ」
「いや、なんかあたしたちにそういう言葉、合わない気がして」

雨宮がそう言うと、藤田はわけがわからないというように首を傾げる。
だが雨宮の横で棚橋は満足そうに小さく笑った。

「よくわかんねぇけど、付き合ってんだろ?」
「う〜ん。世間一般的にはそう言うのかもね」

自分たちの関係は一体なんなんだろうと、雨宮は思う。
付き合っているととか、彼氏彼女とか。
そういう表現が少しもしっくりこないのは何故なんだろうか。

「ホントお前って昔からよくわかんねぇ」
「うるさい。ほら、売り場空いたよ」

そう言って藤田たちに前に進むよう促す。
藤田は雨宮に軽く手を挙げて彼女と共に売り場窓口へ歩いていった。

「元彼か?」

それまで黙っていた棚橋が口を開く。
雨宮がにやりと笑って棚橋の顔を覗き込んだ。

「ヤキモチ?」
「バカ。違うっつうの」
「心配しなくても藤田はただの中学の同級生」

これでもかというほど楽しそうに笑う雨宮に、棚橋は溜息をついた。
そして右手をすっと動かして、雨宮の左手をとる。

「え、棚橋?」
「何?」
「何って……」

手を繋ぐのは、初めてじゃない。
でもそれは、棚橋の部屋の中だけの話で。
こうして外で繋ぐのは初めてだった。

「帰ったら覚えてろよ」
「な、なんでよ!!」

言えるはずがなかった。
藤田が雨宮のことを名前で呼び捨てにしていたことに腹が立ったなんて。
そんなことを言えば、この先ずっとそれをネタにバカにされるに違いない。

「ほら、さっさと行くぞ」

雨宮の手を握ったまま、棚橋は歩き出した。




【あとがき】
第四弾もすっかりバカップルな二人。
時期的には・・・いつだろう?笑
付き合い始めてそんなに時間が経っていないものと思われます。
なんか書きたいネタが色々と頭を巡ってて、ぐちゃぐちゃです。笑






Copyright (C) 2008-2011 miki All Rights Reserved.